研究概要 |
本研究は,地下回転掘削において,シールド掘進機により掘削される土砂の流動特性及び掘削抵抗を理論的かつ実験的に明らかにすることを目的としている. 理論解析では,大深度地下における圧力状態と機体内部への土砂の流入・流出特性を考慮するために,個別要素法に基づく従来の二次元解析を三次元解析に拡張した.チャンバ内への土砂の流入・流出を考慮しない二次元及び三次元の理論解析結果を実機施工結果と比較し,各理論解析の適用可能範囲について検討した.また,実機施工時に得られた物性値を有する砂質土地盤を掘削する場合について,実機を対象とした三次元理論解析も行った. 実験解析では,シールド掘進機スケールモデル,土槽及び油圧式加圧装置等よりなる実験システムを設計・製作した.砂質土地盤及び粘性土地盤においてカッタヘッド前面に作用する地山土圧に相当する圧力を油圧式加圧装置により制御して掘削土砂に負荷し,カッタヘッド前面とチャンバ内の土圧及び掘削抵抗トルクを測定した.流動特性は高速デジタルビデオカメラにより得られた画像情報を画像処理解析し,定量化した. 理論解析,実験解析及び実機施工により得られた結果を比較検討し,次の主な結論を得た. (1)カッタヘッド開口部及びチャンバ内の土砂流動状況と掘削抵抗を十分な精度で予測するためには土砂の流入・流出を考慮した三次元解析モデルを用いる必要がある. (2)土砂の流入・流出を考慮しない二次元及び三次元解析モデルについて,前者はチャンバ中間領域の土砂流動状況,後者はチャンバ内の土砂流動状況と中間ビーム及びかくはん翼に作用する掘削抵抗の推測には適している. また,理論解析により得られた結論は次の通りである. (1)カッタヘッド回転起動直後にチャンバ内へ流入する土砂は,中間ビーム回転軌道外側の領域を流動する. (2)カッタヘッドよりチャンバ内に流入する土砂は,チャンバ前部であるカッタヘッド背面では中間ビーム及びかくはん翼と連れ回って流動し,チャンバ後部である隔壁側のチャンバ内壁周辺では滞留する傾向が強い. さらに,実験解析により,平均切羽土圧に対する平均チャンバ内土圧の比と掘削抵抗トルクとの間には線形関係があることを明らかにした.これは,切羽管理土圧の最適設定に有用である.
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