研究概要 |
平成10年度に引き続き,近接場顕微鏡によるナノスケール加工に関する研究を行った。市販の近接場顕微鏡プローブに加え,自作したプローブを用いての加工を試みた。加工を行う材料として,まず従来のフォトリソグラフィーで用いられている光レジストを選んだ。この場合,近接場顕微鏡による露光以外のプロセスは全て現在までに確立されている手法を用いることができる。本研究では,昨年度作製したプローブおよび市販のプローブを用いて,ガラス基板上にポジ型フォトレジストをスピンコートし,これに近接場顕微鏡プローブを用いてラインパターンを露光し,現像後の形状を原子間力顕微鏡などで観察した。 当初は露光の条件を工夫しても回折限界以下の構造が得られなかったため,,パターニングの対象となる光レジスト薄膜について検討した。その結果,プローブを用いてパターニングを行う場合,高分解能を得るためにはレジスト膜の厚さと粗さとが従来のフォトリソグラフィーの場合以上に重要であり,膜厚が厚い場合には分解能が悪くなることが明らかとなった。この原因ははっきりしていないが,おそらくは膜中での散乱と思われる。薄い膜を得るためにレジストを各種の溶媒で希釈したが,レジストの濃度が薄すぎる場合にはどのような溶媒を用いても膜の表面が粗くなり,プローブによるパターニングには不適当だった。そこで,溶媒の種類・希釈率とスピンコート条件を検討し,厚さ100nmで表面粗さ20nmのレジスト薄膜を得た。このような薄膜に対して近接場顕微鏡によるパターン書き込みを行った。導入するレーザーのパワーと走査速度を調整することにより,光の波長の半分以下のパターンを作製することに成功した。
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