研究概要 |
本研究では,競争環境下における電力系統のセキュリティ確保に関する,新しい枠組みを創生するための基礎的な研究を行った。 1.事故後の送電線過負荷を対象とした予防制御を想定し,IPP等の分散電源からの契約外電力の購入単価の決定手法を開発し,契約外電力の購入を考慮したことによる予防制御の効果や,全体のコストに与える影響について詳細に考察した。 2.誘導価格は送電損失を考慮した系統増分費とセキュリティ制約に対する限界費用とから構成されており,それぞれの値は,スラック母線の位置によって変化する。そこで本研究では,仮想的なスラック母線を導入し,スラック母線の位置に依存することなく,公平に価格を決定できる手法を開発した。 3.電気事業者側の意図と,分散電源側の実際の行動パターンの違いは,電力貯蔵装置あるいはFACTSなどの能動的な制御装置が導入されていることでかなり緩和できると考えられる。本研究では,そのための基礎検討としてまず,これらの機器が導入されていることで,過負荷制約の範囲内で系統から受電できる最大電力(到達可能電力と呼ぶ)が増加し,しかも各母線毎に差がないように潮流状態を制御できることを明らかにした。今後は,その効果が予防制御のための誘導価格へ適切に反映できるかどうかを検証することが課題である。 4.制御対象として潮流過負荷だけでなく,電圧制約や無効電力制約についても考慮できるよう拡張を行った。同様のアプローチに従って進めることで,分散電源の無効電力に対する価値を算定することが可能となり,これを予防制御のための誘導価格の1つの目安とできるものと考えている。
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