研究概要 |
本研究は、直線集束ビーム(LFB)超音波顕微鏡による光ファイバ・プリフォームの弾性特性評価法の確立を目指したものである。 気相軸付け(VAD)法により純粋な石英ガラスロッド、及び単一ドーパントを添加した石英ガラスロッドを作製した。ドーパントとしては、F,GeO_2,P_2O_5、及びB_2O_3を取り上げ、不純物濃度の異なる複数のガラスロッドを作製した。各ロッドから厚さ4mm程度の円盤を切り出し、両面を光学研磨し試料とした。Fをドープした試料に対して、まず、LFB超音波顕微鏡による漏洩弾性表面波(LSAW)速度の測定、およびEPMA法による元素分析を行い、F濃度およびプリフォームの製造過程において残留する塩素濃度と音響特性の関係を明らかにした。Fおよび塩素濃度に対するLSAW速度の変化率は、それぞれ-115.6(m/s)/wt%、および-47.4(m/s)/wt%であった。LSAW速度の測定分解能を0.3m/s(0.01%)とすると、F濃度および塩素濃度の変化に対する感度は、それぞれ2.6×10^<-3>wt%および6.3×10^<-3>wt%となる。次に、光導波路部のコア部が純粋石英で、クラッド部および構造的クラッド部にFがドープされたプリフォーム試料に対して、径方向におけるLSAW速度の分布を測定した。元素濃度分布の分析結果から見積もったLSAW速度の分布と比較したところ、そのプロファイルがよく一致し、不純物濃度の分布をLSAW速度の変化として敏感に捉えられることを明らかにした。本手法が光ファイバープリフォーム及びその作製プロセス評価において極めて有用であることが示された。また、GeO_2,P_2O_5,B_2O_3試料の切り出しにおいて、クラックが生じやすいことから、これらの試料には内部残留応力が存在すると考えられる。今後、これらの試料に対しても音響特性の測定を行い、元素濃度分布と比較することにより、内部残留応力の評価も可能であると考える。
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