研究概要 |
波長1.3μm帯面発光レーザ実現のため,有機金属気相成長(MOCVD)法によるGaInNAs/GaAs量子井戸の結晶成長技術を確立し,長波長帯面発光レーザの活性層に適用することを目指した. 本研究では,ジメチルヒドラジン(DMHy)および有機砒素原料(TBAs)を用いる MOCVD 法によりGaInNAs量子井戸の成長を行った.本年度は,高品質なGaInNAs量子井戸の形成を行なう基礎技術として,1)高歪GaInAs量子井戸の成長による波長の長波長化,2)高歪GaInAs量子井戸レーザの製作と評価を行った.GaInNAsは,窒素の導入によりGaInAsよりも長波長での発光を実現するが,窒素を導入するほど結晶品質が劣化することが知られている.このため,GaInAsによりできるだけ長波長の発光を実現し,GaInNAsにおける窒素量を減少させることが目的である.GaInAsの長波長化ではInの増加により高歪化するが,検討の結果,歪バッファ層の導入が高品質化に必要であることを示した.この結果,波長1.2μmにおいても低歪量子井戸と同等の光学特性を実現した.実際に波長1.2μmレーザを製作し,しきい値電流密度も短波長レーザと同等の低い値を得た.さらに,180℃までの高温動作や150-200Kと大きい特性温度を実現した.この結果は,GaInNAsよる長波長レーザがわずかな窒素組成で実現できる可能性を示しており,さらに,その特性もGaInNAsではいっそう大きな伝導体バンド不連続となることから,優れた温度特性となる可能性がある. 前年のMOCVD法におけるGaInNAsの窒素導入特性と,本年の 高 GaInAs レーザの実現により,GaInNAs長波長帯面発光レーザ実現の基礎を築いた.
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