研究概要 |
Tb/Feアモルファス多層膜について,X線回折および広域X線吸収微細構造(EXAFS)分光法による構造解析,磁気特性の評価および軟X線領域における磁気円二色性(MCD)効果について実験を行った.以下にその結果についてまとめる. 1.構造解析 小角X線回折の結果から,積層周期が約1nm以上の時多層構造となっていることがわかった.これは従来の実験結果と整合する.また広角X線回折から、Tb/Fe多層膜は積層周期が比較的短いときにはアモルファス構造となっており,積層周期が長くなると結晶質へ変わっていくことが示された.さらに,EXAFSの結果からFe層の膜厚が2.3nm以上になるところから急激に構造の変化が起きていることが明らかにされた. 2.磁気特性 交番力磁気計(AGM)による磁気特性の測定結果から、磁気特性に与える影響は積層周期が5nmまでの短い領域ではTbが支配的であり,さらに長くなるとFeが支配的になることが確認された.とくに積層周期が5nm(Fe層厚2.5nm)以上の領域では,Fe層が構造変化を起こすために,飽和磁化は急激に増加する傾向が見られた. 3.MCD効果 Tb/Fe多層膜のFeL吸収端,全電子収量法によるMCD効果の測定から,積層周期が1nmと短いときにはMCD効果は小さく,積層周期が長くなるにつれてMCD効果は大きくなる,Feがアモルファス状態の時と体心立方格子の時とでは,吸収スペクトルに現れるピークの位置が違うことが判明した.蛍光法によるFeK吸収端のMCD測定から,積層周期が短い多層膜でもMCDが観測されるが,そのピーク位置がbccFeのピーク位置からシフトしていることがわかった. 以上のことから,希土類-遷移金属系の薄膜ではFeの局所的な構造が変化することで,電子状態が変化すると考えられる.
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