研究概要 |
専門医の長年の臨床経験を踏襲し,使っていくうちに賢くなる学習成長型システムの構築を目指し,本研究では以下の技術を開発した. (1)システムの持つ固有の特性に適応した処理を行う学習型信号処理の開発 医用画像診断システムの持つ固有の特性に適応した画像処理を行うための学習型画像処理を開発し,実際のシステムにおいてその有効性を評価した.実際に計測したシステムの特性を学習用信号に反映させ,医用画像診断システムに適応する学習型画像処理を実現した.開発した学習型画像処理では,従来の非学習型画像処理に比べ,処理後の画像の診断関心領域が見易く,診断情報の豊かな画像が得られることを,臨床専門医の評価により明らかにし,学習型信号処理の有効性を示した. (2)学習機構への入力情報を自動的に選択する手法の開発 学習型システムに搭載されるニュ-ラルネットなどの学習機構への入力情報を,自動的に選択する手法を開発した.開発した手法を画像処理フィルタの獲得問題へ適用し,手法の有効性を検証した.検証の結果,入力情報を自動的かつ合理的に選択できることを示した.従来手法との比較により,提案手法が,選択された入力情報の合理性の観点で優れ,更に,選択により構築された学習型システムの性能においても優れることを示した. (3)専門医の非記号系知識を獲得する学習型診断支援システムの開発 従来の処理で実現が困難であった非記号系知識を獲得する処理システムを開発した.専門医による臓器の輪郭抽出は,非記号系知識を含む処理である.この処理過程は,専門医自身が明示できない処理であるため,記号に基づく従来の処理では行うことができなかった.本研究では,これを学習により獲得するアプローチをとり,大変良好な結果を得た.専門医のたどった輪郭とよく一致する輪郭を,自動的かつ安定に抽出することが可能な学習型医用画像診断支援システムとしてまとめた.
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