研究概要 |
本実験で計画されていた,位相変調器を含む入射光学系,温度制御で光路長を可変できる光共振器本体については,ほぼ予定通り完了した.本題である誤差信号の取得に関しては,フォトディテクタの試作が長引き,交付期間中に我々の提案する方法が有効であることを実証するには至らなかった.試作の過程で得られた知見としてまず挙げられるのが,フォトダイオードの電極形状に由来するRFの応答の空間分布の発生である.フォトダイオードの飽和特性が仮になくても,DC成分とRF成分での応答が空間的に一様でない現象が観測された.これにより0次の誤差信号に高次の誤差信号が混入することがほぼ確実となったので,本研究の目的とは別に詳細に調べる必要があると考えている. また,初年度で,光位相変調器へのRF印加電圧が,意図しない電気的な結合を介して誤差信号を狂わせる現象が問題となり,低減方法を検討していたが,次年度で同期検波後の低周波信号も含めて総括的に対策を見直し,問題とならないレベルにまで不要干渉を低減する電気系の構成方法を見出した. なお,本研究と同様の目的で誤差信号を得る実権がLIGO計画のR&Dの一環としてMuellerらによって行われ,2000年2月に公表されている.Muellerらのグループでは単純に動径方向に分割線をもつフォトダイオードを用いており,Guoy位相調整用のテレスコープに光学モードの節と分割線を合わせる機能を含めたもので,この種の誤差信号を実際に取得した初の実証実験である.本研究は,2次の信号取得の実証という意義からは遅れをとってしまったが,フォトディテクタの飽和を利用して光電変換系を簡略化できるという提案は依然ユニークなものであり,引き続き実験検証を行う予定である.
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