研究概要 |
本研究は,モウソウチクの節構造の仕組みから円筒系構造物の耐荷力性能を解き明かすことを目的としている。本年度の調査・研究の実績概要を以下のとおり報告する。 1.竹かん部の維管束の分布と強度特性 モウソウチクの組織構造および強度特性を把握するために、竹かん部の一部をサンプリングし、維管束の分布と引張強度の関係を調べた。具体的には、竹かん部を厚さ方向に5層にスライスし,このときの維管束の分布密度を測定した上で、維管束鞘の分布密度に対する材料強度について調査を行なった。その結果、両者の間には相関が高く、外縁部に近づくにつれ強度が高いことが得られた。また、繊維方向に直角となる方向からの引張実験も行なった。この結果、繊維方向の引張強度とは異なりかなり低い強度で破壊に至ることがわかった。このことから、円筒構造が持つ幾何学的特性である閉断面によるねじり剛性が高いことが、繊維直角方向の引張強度が低くても強靭な異方性を持つ組織構造を有していると考えられる。 2.モウソウチクの積層円筒シェル構造の構造解析の実施 生体(モウソウチク)の強度特性を知るために,上記の竹かん部のスライス材料強度試験を基礎データとして、その各スライスの材料定数を円筒シェル有限要素プログラムに組み入れ、積層モデルとして耐荷力特性を調べることとした。すなわち、維管束の分布密度を考慮に入れた上で、ずれのない積層モデルとし構造解析を行なった。これは円筒系構造の最適材料配置を考える上で貴重なデータを与えてくれるものと思われる。このほか,解析の実証として節の有無による円筒シェル構造の曲げ試験を実施した。このように,モウソウチクは材料力学的強度特性と中空円筒構造が持つ幾何学的特性を併せ持つ生体構造であり,いくつかの自然の理に適った構造形態があるものと考えている。 以上のことから、全体を通して本研究課題については良好な結果が得られたが、その生体構造が持つ力学的メカニズムの解明にはさらに多角的な研究が必要であると思われる。これらの研究成果を報告書および論文としてまとめた(11.研究発表の目録を参考)。
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