研究概要 |
本研究は,固気液共存場における物理現象を一つの集合体として統一的に取り扱うことが有効であるとの立場から,非圧縮性・圧縮性流体場を同時解法し,多相流体場を統一的に取り扱うことが可能なC-CUP法に基づく高精度な3次元数値計算手法を開発したものである.さらに,この手法に高精度なDynamic LES乱流モデルを組み込み,気液混相乱流場の数値計算手法へと拡張を行ったものである. 以下に具体的な結果を示す. (1) 本論文で開発した数値計算手法は,現在最も有力な統一解法として考えられているC-CUP法をベースに数値アルゴリズムを構築した.これに加えて,非線形項(移流項)の差分には高精度なCIP法,各相の界面の捕獲には密度関数法を適用し,高密度比,高粘性比を有する固気液3相が共存する流体場を追跡することが可能となった.この他,界面の不安定現象などへの適用も考慮して表面張力モデル(CSF Model)の導入した.(2)モデル定数の決定に任意性・不確定性を極力排除できるDynamic LESモデル.(乱流モデル)を併用できる数値モデルに拡張した.(3)自由表面解析モデルの典型的な検証問題として良く用いられる2次元および3次元の水柱崩壊,3次元液滴落下(ミルククラウン現象)問題に適用し,気相と液相の運動の精度検証を行った.さらに,単一気泡の上昇,複数気泡の合体・分裂などの流れ場解析に適用した.(4)本数値計算手法を用いて,砕波後の大規模ジェットにより生成される気液混相流体場のスプレイアップサイクル過程に対する数値解析を行った.これによって,砕波帯における連行気泡を含めた流速場の3次元構造および組織的渦構造について明らかにした.また,スプレイアップサイクル過程における気液混相流体場の乱流諸量(レイノルズ応力,乱流エネルギー,乱流散逸など)について検討を加え,砕波後の連行気泡を含めた乱流場の3次元的な発達過程を明らかにした.(5)実流体場における気液二相界面の代表的な不安定問題である風波の発生・発達現象について,その力学機構の解明を行う第一段階として,砕波を伴う気液界面で行われる界面相互作用現象への本数値計算手法の適用性を検討した.
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