研究概要 |
高速道路で頻発する自然渋滞の発生や道路の交通事故の問題が,車両の運転者の知覚・認知,および運転挙動の結果として現出する現象であることから,渋滞や事故の発生メカニズムを運転挙動に近い観点から定量的に把握することが求められている.本研究では,知覚情報の中で最も重要と考えられる視覚情報に着目し,道路上の「視距」を求める方法を検討するものである.本年度は,昨年度開発した道路幾何構造を三次元構造物として定式化する過程で新たに定義した「予見視距(Preview Sight Distance)」について,その算定手法の理論的な整理と精緻化を図り,計算アルゴリズムを完成させた.現在使われている道路設計指針における道路線形の組合せに対して,これらの線形要素と予見視距との関係の感度分析を行った.また実際の高速道路の約100km区間についての道路線形・道路構造データ,及び10年間の事故発生データを収集し,視距と事故発生件数の関係を分析した.一方,現実の高速道路における視距の実態を調査するために,昨年度プロトタイプを開発したディジタル画像処理による実態の予見視距を測定するコンピュータソフトウェアについて,高速道路上の運転者から見た道路幾何構造の見え方のビデオ映像を用いて,アルゴリズムの精緻化を試みた.しかしビデオ映像の分解能による精度の限界,映像の歪みによる影響,測定手法の持つ計測誤差の影響などにより,理論計算値と単眼測量の組合せによる本手法の精度上の問題点が明らかとなった.逆に近年のバーチャルリアリティ技術の向上により,理論モデルによる視覚環境をコンピュータグラフィックで再現することが可能となり,これを実際の映像と比較して実態の視距の計測できる可能性が示された.
|