研究概要 |
本年度の研究は,圧縮強度が100MPaを超える高強度コンクリートの自己収縮変形において,ひび割れ発生に至る破壊状況の主たる原因となる若材齢クリープに着目し,新しい若材齢クリープ解析手法を提案することと,破壊力学的な手法を活用し,拘束変形時のひび割れ発生基準を検討することを目的としている。 まず,若材齢コンクリートのクリープ特性に関する定量評価方法について検討した結果,若材齢クリープの定量化について,バーガースモデルによる完全な時変数レオロジー解析手法を新たに提案したこと,コンクリートのヤング係数発現と相関する各種時変数レオロジー定数の時系列関数を導出したこと,クリープ歪みを,遅延弾性歪み成分と永久歪み成分に分け,クリープ除荷挙動において,物理的意味のある変形重ね合わせ評価手法を提示したこと,提案した時変数レオロジー解析手法について,逆解析により時変数レオロジー定数を同定し,物理的意味のある弾性係数および粘性係数によるクリープ特性値を見いだしたこと,を示した。 一方,低熱ポルトランドセメントを使用した高強度コンクリートの拘束変形特性について,実験的及び解析的に検討した結果,時変数レオロジー逆解析によるクリープ係数に基づくクリープ重ね合わせ反復法を提案し,その有効性を示したこと,自己収縮環境及び比較のため乾燥収縮環境下における拘束変形特性を定量評価するにあたっては引張クリープ特性の考慮が重要であること,低熱ポルトランドセメントを使用した場合,自己収縮変形自体に起因するひび割れの危険性は比較的少ないが,乾燥収縮変形の影響が加味すると,急激にひび割れの危険性が高まること,を定量的に明らかにした。 以上より,昨年度と本年度の2年間の研究成果を併せて,高強度コンクリートの自己収縮変形に関する破壊力学的研究がまとめられた。
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