本研究は、少子化における子育てを物的環境整備のみならず、人的ネットワーク・地域コミュニティの中で支援していく住宅・住宅地計画の基礎的な知見を得るために、近年問題視されている「育児不安」や「子育て能力の低下」現象に着目し、こうした現象が地域的にどのように発生し、偏在しているのか、また、その環境的要因は何かを明らかにすることを目的としている。 久留米市(人口23万人)全域において、公園外出時の子育て世帯を対象に、育児と住環境に関するインタビュー調査を実施した結果、以下のことが明らかになった。 1.新規の世帯形成期には、結婚や就職などが契機となり、住宅や住環境に関する知識や情報が欠落したままで入居が選択される傾向が強い。その後の出産・子育ての中で住宅や住環境への不満が徐々に顕在化してくるが、住宅についての不満は狭さや古さが多く、住環境については交通騒音が顕著であるが、子育てとの関連性についてはまだ潜在化していて問題視されにくい。一方、住宅立地は利便性を重視し、肉親が市域に居住する場合は何よりも近居を考慮しており、親族との地域的ネットワークの形成を意図している。 2.育児不安については、いずれの事例も少なからず育児不安の傾向を示すが、これが公園に外出している比較的健康な母親の特性であることから、地域内にはより育児不安の強い層の存在が推測される。その対処について、その方法と支援の対象をみると、医療保健関係者への電話・FAXでの相談や、育児書・育児雑誌の活用が多く、情報化時代の支援ツールの可能性を示唆している。また、同年齢の子育てを通じた友人への相談も多いが、その友人が同窓であることや、地域での異年齢の母親への相談はほとんどなく、子育て世帯の地域コミュニティでの孤立化が確認された。
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