研究概要 |
SrTiO3にNbを0.02mol%ドープした系について、導電率の酸素分圧依存性を詳細に解析し、酸化還元平衡定数,電子の易動度などの物性値を算出することができた。この系では,電子濃度は通常,ドープしたNbの量でほぼ決定されるが,高温,還元雰囲気で酸素空孔の生成によりキャリア濃度が増大することが分かった。これらの異なる起源のキャリアはどちらも同様の易動度を示した。また,より高温では荷電子帯からの熱励起によるキャリアの生成も見られた。ここからバンドギャップを算出すると約3.2eV程度であった。さらに,酸素同位体拡散の実験を行い,酸素の同位体拡散定数を得た。これらを総合的に解析し,この系の酸素イオン空孔濃度および酸化物イオン導電率を酸素分圧の関数として見積もった。 また,上記試料の単結晶と白金との界面でのSchottky障壁の形成について,I-V測定,およびC-V測定を行った。この結果,600℃までの挙動は,emissionモデルと拡散モデルの中間的な挙動として記述できることがわかった。このとき,C-V法によって障壁高さを求めたところ,約1.2eV前後となった。また,この障壁高さは平衡酸素分圧の変化に伴って可逆的に変化した。この原因がSrTi(Nb)O3表面近傍の酸素空孔等に起因するものか,あるいは白金側の表面の酸化還元に起因するものかは明らかになっていない。 この試料に大きな電圧を印可すると,場合によって,電流値が非常に長い緩和時間をもって変化する現象がみられた。これは試料内部での酸素空孔分布の変化とそれに伴う表面近傍の電子状態の変化を反映すると考えられる。
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