研究概要 |
薄膜は材料が基板に拘束された状態にあり、格子の変形や機能などバルク材料とは異なる挙動を示すことがある。また高温での成膜ではその後の冷却過程で熱膨張率差や相転移によって基板と膜の間の歪みが生じ、膜特性に影響を与えている。本研究では極点図形測定装置に高温測定ユニットを追加し歪みの発生、配向性の変化などを、直接高温でその場観察しその発生の機構を解明する事を目的とした。さらに熱処理条件を変化させたり外部応力の印加するなどして、室温またはデバイスとしての使用環境下においてもっとも特性が発揮できるような残留応力状態の維持、制御を試みた。 イットリア添加ジルコニア(2mo1%Y_2O_3-ZrO_2)中には室温において正方晶中に単斜晶相が析出している構造を取っている。この試料を加熱すると約600℃で単斜晶相は正方晶に転移して消失する。これらの変化の現象を本高熱X線極点図形装置によってとらえ、正方晶(t)中に析出する単斜晶(m)の方位関係はb_m//a_t//a_c,c_m//c_t//a_cであることが分った。 基板温度750℃でMgO基板上にMOVCVD法により成膜したTi過剰のSrTiO3薄膜では室温においてバルクのSrTiO3に比べて大きく、基板からの引張り応力を強く受けた格子(a=0.4013,c=0.3993nm)となっていた。この薄膜を成膜温度以上の1000℃に加熱すると、SrTiO_3はバルクと同等の格子を取ると共に過剰Tiが放出され、基板界面付近では基板との反応によりMgTi_2O_4が、また膜表面付近では酸化によりTiO2が析出し、それぞれ膜と特定の方位関係を保っていることが分かった。
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