研究概要 |
本研究は,ゾル-ゲル法を基本として,金属アルコキシド分子,あるいはそれを加水分解して生成したクラスターの自己組織化能を利用してナノスケールにおける新規組織・形態制御技術の確立を目指して遂行されたものである.本研究の準備段階で,易加水分解性の高濃度アルコキシド溶液を加水分解すると,加水分解・重縮合反応過程でBaイオンとTi(OR)_x(OH)_y(OTi)_z(x+y+z=6)からなるクラスター(以後,Ba-TiO_6クラスターと呼ぶ)がTiO_6八面体の頂点酸素を共有して連結することを明らかにした.本研究では,このBa-TiO_6クラスターを気-液,あるいは液-液界面で2次元面内で自己組織化させナノ構造BaTiO_3自立膜の合成を試みた.得られた成果を次に示す. 1.高濃度アルコキシド溶液を部分加水分解して得られたゾルを,これまで報告例のない非水溶媒界面(窒素/流動パラフィン界面)に展開し,良好な表面平滑性と1μm程度の極めて薄い透明自立ゲル膜の作製に成功した. 2.本系は2種類の金属を含むが,化学量論組成,組成均一性に優れた結晶性BaTiO_3自立ゲル膜を得ることに成功した.ゲル膜のBa/Ti比は仕込み組成と同じでBa/Ti=1. 3.X線回折では非晶質のハローパターンを示すが,電子線回折ではBaTiO_3結晶格子と一致するデバイ-シェラー環が膜のどの部分からも観察された.このことから数十Å以下の極めて微細なBaTiO_3結晶粒子が均一に分散したナノ構造BaTiO_3ゲル膜の合成に成功した. 4.この自立ゲル膜を焼成して,100nm以下のナノスケールの粒径を有し,かつ緻密な透光性ナノ構造BaTiO_3焼結自立膜の合成に成功した.
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