研究概要 |
昨年度製作した積層構成を4:1,3:1,2:1,1:1に制御した直交積層型炭素繊維強化炭素(C/C)を用いて今年度は新たにせん断試験を行った。それぞれの方向での引張試験、せん断試験、破壊靭性試験の結果を総合して破壊挙動の理解を行った。Iosipescu法を用いたせん断試験では引張試験と同様、せん断弾性率、せん断強度ともに繊維の配向比率により決定されていることが明らかとなった。両側切り欠き付き試験片の破壊挙動は、荷重方向の繊維が多い場合は、荷重負荷方向に平行に切り欠き先端から上下方向にクラックが進展する様子が観察された。一方、1:1以上に荷重方向の繊維が少ない場合は切り欠きからクラックは真っ直ぐに荷重方向に垂直に伸びる様子が観察された。切り欠き付き試験片の最大破壊応力は、0度:90度が1:4から増加し1:1まで増加する様子が観察された。その後0度方向の繊維が増加しても最大破断応力は変化しなかった。これは破壊が荷重方向の繊維を破壊するモードから、せん断破壊モードに移行し結果的に切り欠き敏感性が完全に失われたことを表している。せん断強度は1:1の場合が最も大きく、2:1、3:1、4:1となるにつれて低下した。せん断強度の低下と破壊抵抗の増加により破壊モードの遷移が発生することが確かめられた。この結果、これまでC/Cの破壊モードはせん断型であるとされてきたが、必ずしもそうではなくせん断強度とクラックの進展抵抗によって決定されていることが明らかとなった。現在、これらの実験データと観察された破壊モデルを用いて定量解析を実行中である。
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