研究概要 |
本研究では,有機シリコン化合物を原料とした高周波プラズマCVDにおける,低いプロセス温度での反応メカニズムを実験的に明らかにし,さらに,その結果に基づき,室温で高純度酸化シリコン薄膜を合成するプロセスを開発することを目的とした. 【気相反応】 導入された有機シリコン分子のほとんどがプラズマによって解離し,Si,SiHx,SiO等の比較的低質量の分子が,Siを含む前駆体となることが明らかとなった.また,別に導入した酸素ガスは,原料の炭化水素成分の酸化に,気相において優先的に消費されることがわかった. 【表面反応】 気相から吸着したメチルラジカルがSi-CH_3成分の由来であり,これを酸化・除去するためには,基板表面近傍の気相中に,酸素ラジカルが存在する必要があることがわかった.酸素ガスは気相中で有機成分の酸化に優先的に消費されるため,基板近傍に酸素ラジカルが存在するためには,ある一定量以上の酸素ガス混合率に設定する必要がある.また,Si-OHの脱水縮合反応が,室温でも起こり得ることが示され,これがSi-O-Si結合形成の主要機構であると考えられる.ただし成膜中には,この反応を促進する,加熱以外の機構が存在することが推定される.これを明らかにすることがSi-OHの残留問題を解決し,高純度SiO_2薄膜の室温形成実現に大きく近づくことができる. 【プロセス制御】 本研究を通じて,質量分析法を用いた,有機成分を含まないSiO_2膜を作製するための最適な酸素ガス混合率を決定する手法,および赤外吸収法を用いた,有機シリコン原料の導入量を簡便に測定する手法が提案された.プラズマCVD法におけるプロセス制御に,それぞれ応用が期待できる.
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