研究概要 |
薄膜状の水素吸蔵合金を製造する従来のプロセスでは,いずれも(1)取扱いの難しい活性金属を使用する,(2)大面積化が困難,といった実用化に向けての難題を抱えている.そこで本研究では,バルク状合金に比べ大面積化,形状の自由度の向上が図れる薄膜状の水素吸蔵合金を溶融塩電析法を用いて作成し,その水素吸蔵・放出ならびに劣化・微粉化特性を評価することを目的とした.合金膜生成法として溶融塩電析・合金化プロセスなる新規の方法を取り上げる.本研究では,合金の「軽量化」に着目し,Ni基板(あるいはCu基板)上に種々の条件(電析温度,電流密度,時間)下においてMgを電析させ,Mg_2Ni(あるいはMg_2Cu)水素吸蔵合金薄膜を作成し,効果的な合金生成条件を決定した.すなわち,条件の如何によっては,単層の合金膜が生成せず,Mgが表面上に残存する場合や水素吸蔵合金以外の金属間化合物が確認された. 一方,合金生成メカニズムの解明の目的で,電析後の基板の開回路電位(open circuitpotential)の推移ならびにcyclic voltammetoryの計測を行い,生成合金とそれが安定に存在しうる電位を平衡論的,速度論的に決定した.さらに生成した水素吸蔵合金の水素吸蔵・放出評価をアルカリ水溶液中で行ったところ,水素放出特性が極めて劣ることが分かった.
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