研究課題/領域番号 |
10750549
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研究種目 |
奨励研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
化学工学一般
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
後藤 健彦 広島大学, 工学部, 助手 (10274127)
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研究期間 (年度) |
1998 – 1999
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研究課題ステータス |
完了 (1999年度)
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配分額 *注記 |
1,700千円 (直接経費: 1,700千円)
1999年度: 600千円 (直接経費: 600千円)
1998年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
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キーワード | Nーイソプロピルアクリルアミド / N、N'-ジエチルアクリルアミド / 感熱性ゲル / 多孔質ゲル / 膨潤・収縮挙動 / 構造制御 / 細孔径分布 / 転移温度制御 / N-イソプロピルアクリルアミド / N,N-ジエチルアクリルアミド / 溶質排除去 |
研究概要 |
感熱性多孔質ゲルは、これまでに数多くの研究例が報告されているが、その応答速度の遅さが問題となり、実用化の例は少ない。そこで、応答速度の速い感熱性ゲルを合成し、その特性を明らかにすることを目的とした。 モノマーでは両親媒性だが、ポリマー化すると転移温度以上で疎水性を示す、N-イソプロピルアクリルアミド(NIPA)や、N,N-ジエチルアクリルアミド(DEAA)モノマー水溶液を、それぞれ、ポリマーの転移温度(約30℃)以上の所定の温度で重合すると、相分離と重合が同時に生じ、スポンジ状のゲルが合成された。SEMによりこれらのゲルは数μmの微少な粒子が凝集した多孔質構造をしていることが明らかになった。これらのゲルの膨潤・収縮速度は、合成温度がDEAAゲルでは37℃NIPAゲルでは25℃を超えると著しく大きくなり、従来の均質なゲルの100倍以上の速さで膨潤・縮可能であることが明らかになった。 さらに、分子量の異なる数種のポリエチレングリコール分子とポリスチレン系ラテックス粒子を用いて、合成温度の異なるDEAAゲルの内部細孔径の分布を0〜1000nmの範囲で測定した。高温で合成したゲルの細孔は、主にポリマーネットワークからなる孔径50nm以下の細孔と、相分離によって形成させる孔計1000nm以上の細孔の2種類から構成されていることが明らかになった。また、細孔径の分布は合成温度によって異なり、特に孔径100nm以上の細孔の体積割合は、合成温度が30℃と40℃の間で大きく増加しているが、40℃以上に合成温度を上げても細孔径分布に大きな変化は見られなかった。従って、感熱性多孔質ゲルの膨潤・収縮速度は、内部構造に大きく影響を受け、孔径100nm以上の細孔の体積割合が多くなる程速くなることが明らかになった。また、充分に多孔質化したゲルの膨潤速度は、ゲル内部に膨潤度の分布が生じないため、均質なゲルと同様に平衡径の2乗に反比例することが示された。 さらに、工業的応用を考慮し、特別に冷却しなくてもゲルが充分膨潤するように、多孔質ゲルの転移温度の制御を試みた。NIPAに親水性のアクリルアミドを共重合すると、低温(30℃)で重合した場合は、転移温度、膨潤度共に上昇するが、多孔質ゲルを得るために高温(60℃)で重合すると共重合の効果が現れにくいことが示された。そこで、合成温度を低温から高温へと段階的に切り替えて合成すると、高温で合成した場合と比較して転移温度の上昇はないが、膨潤度ならびに膨潤速度が改善されることが示された。 以上本研究により、感熱性ポリマーが転移温度以上で相分離する性質を利用した、応答速度の速い感熱性多孔質ゲルの合成が可能となった。また、多孔質構造と膨潤特性の関係が明らかになり、合成条件によって、多孔質ゲルの構造と膨潤特性をある程度制御可能であることも示された。
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