研究概要 |
申請者らは珪酸エチル(TEOS)蒸気を気相中に導入することにより(in-situ調製)、反応器中で調整された固体シリカ種が400℃以下の比較的低温でn-ブタン酸化反応に活性を示すことを見いだした(A.Satsuma et al.,Chem.Lett.,1997,1051)。通常は不活性とされているシリカ種上で、反応性に乏しい低級アルカンが酸化されるという現象は科学的、工学的な見地から極めて興味深い。本研究ではこの現象に対して、(1)現象論の整理と、(2)低温でのラジカル的酸化反応機構の解明、という2つの観点から研究を進めた。その結果、(1)については以下が明らかになった。(1)本反応系は通常の触媒反応とは異なる特異的な温度依存性と生成物分布を示す、(2)通常の触媒反応では得られないフラン類が生成する、(3)本反応系では気相のラジカルが関与する、(4)シリカ種は反応間壁にdepositし触媒として作用している。また、反応機構を明らかにするため、in-situ調製条件の影響、ラジカルトラップ剤(NO)の導入等によりシリカ種の作用機構について検討を行った。その結果、(5)シリカ表面の水酸基サイトが活性サイトである、(6)活性サイトは気相ラジカルのinitiatorとして働き反応が開始される、(4)シリカ表面の活性サイト上で生成したブチルラジカルが気相中のラジカル連鎖反応により反応が進行する、ことが解明された。最終的な成果として、シリカ触媒上でのブタン反応機構を提案した。
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