研究概要 |
イオン選択性電極(ISE電極)は、簡便かつ迅速に目的イオンの濃度測定が出来るデバイスとして、開発・商品化が行われているが、医学・臨床学・環境分野において問題となるアンモニウムイオンやアミン類に対する高性能なセンサーの開発が切望されている。本研究では昨年度、ピラゾール環を有する大環状アザクラウンエーテルを感応物質として用いたISE電極開発し、従来品の2倍の感度を示すアンモニウムセンサーとして使用できることを論証した。そこで本年度は、アンモニムイオンのみならず1級〜3級アミン数に対しても選択的に感応すると予想される化合物の合成に取り組んだ。その結果、1,4,7-Tritosyl-1,4,7-triazacyclononane,1,-4-ditosyl-1,4-diaza-7-oxacyclononane、および、アミン類間の識別能向上を目的として上記の感応物質にマスク化合物として結合させるCTV(Cyclotriveratrylene)を得た。1,4,7-Tritosyl-1,4,7-triazacyclononaneとCTVを感応物質として用いたISE電極を構築してイオン選択性能評価を行ったところ、予想に反し1,4,7-Tritosyl-1,4,7-triazacyclononaneは銀センサーになるうることが明らかとなった。銀イオンに対するアンモニウムイオンの選択係数(log k^<NH_4,Ag>_<Pot>)は+2.04で、この値はアンモニウムイオンより約109倍銀イオンに応答しやすいことを示している。これに対し、マスク化合物として使用しようと考えたCTVは、アンモニウムイオンに対して高い選択性を示した。アンモニウムイオン識別の際に妨害となるカリウムイオンに対する選択係数(log k^<K,NH_4>_<Pot>)は+0.43で、この値はカリウムイオンより約2.7倍アンモニウムイオンに応答しやすいことを示している。しかし、CTVの空孔径が約5.53Å程あることから比較的大きなアルカリ金属イオンに対する識別能が低かった。そこで、現在置換基を種々変え、さらに識別能の高いCTV誘導体の合成を行っている。
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