研究概要 |
2年間にわたる本研究において、主に以下の2つの系を取り上げ、陽イオン置換とキャリアドーピング及び層状構造変化の密接な関係を明らかにしてきた。 まず、Bカチオンとして銅の他にチタン、ルテニウム等の異種のイオンを含む一連の化合物(A_n(Cu,Ti,Ru)_nO_<3n-δ>:nは単位胞中のペロフスカイト単位数)を取り上げた。一般に、酸化物高温超伝導体はペロフスカイト構造(組成式)ABO_3)を基本とし、CuO_2超伝導面を有するために2次元性の強い結晶構造を持っているが、我々の研究により発見した2つの新しい銅チタン酸化物系、Ln_2CaBa_2Cu_2Ti_3O_<14>(Ln_2=La_2〜Tb_2,LaY〜TbY)及びLn_2Ca_2Ba_2Cu_2Ti_4O_<17>(Ln_2=Pr_2〜Tb_2)においては、Ti^<4+>サイトへのCu^<2+>置換によりCuO_2面へホールドーピングを行った場合、置換量の増大とともにCuO_2面の多い相から少ない相への相変化が起きることを明らかにした。また、この相変化によってCuO_2面へのホールのドープ量も変化することを見出し、層状構造化・陽イオン比とホールドーピングの間には非常に興味深い関係があることが判明した。また、銅ルテニウム酸化物系において、新規超伝導体RuSr_2EuCu_2O_yを発見し、この系において話題となっている「強磁性と超伝導の共存」について、その是非を議論した。 また、高温超伝導体は一般に酸化物であるが、本研究では同様な層状構造を持つ新たな系として、層状硫化酸化物(一般式:(Cu_2S_2)(Sr_<n+1>M_nO_<3n-1>))を取り上げ、新物質探索を行った。Mサイト金属置換を行うことにより3つの新規層状硫化酸化物、(Cu_2S_2)(Sr_2CuO_2)、(Cu_2S_2)(Sr_2NiO_2)および(Cu_2S_2)(Sr_3Sc_2O_5)を発見し、その構造および磁性について議論した。また、この系においても他価数金属置換によりキャリアドープが可能であることを示し、今後の物質開発における指針を得た。
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