研究概要 |
ウルツ鉱型GaNがc軸方向に持つ非対称性(極性)が、MOCVD法によるGaN成長時に誘起する問題を明らかにすることを目的に研究を行ってきた。 (1)N面GaN薄膜の成長モード N面(-c)GaN薄膜では、数10μmの大きさを持つ6角形ファセットが多く集まった表面モフォロジーが特徴である。成長初期段階からこの特徴的な6角形ファッセットが形成されていた。そして、成長時間と共にそれぞれの6角形ファッセットが衝突するまで横方向の成長が進み、その後c軸方向にスパイラルらしき成長が始まる様子が観察された。これは薄膜前駆体のシンクとして働いていた6角形のステップエッジがお互いに衝突した時点でシンクとして機能しなくなり、別のモードで平坦な6角形上にGaNが成長したためと考えられる。 (2)不純物混入のGaN極性依存性 成長条件に関わらず、C,O,Alの不純物はGa面(+c)GaNよりも-cGaNに多く含まれることが2次イオン質量分析(SIMS)より明らかになった。また、GaNにp型ドーパントを気相中に同量混入しても、-cGaNに多くのドーパントが含まれることがSIMSおよび発光スペクトルより確認された。これは+cと-c極性により表面構造が異なるため、前駆体のGaN成長表面での吸着エネルギーに差が生じたためと考えられる。N終端されたGaN表面上でGaと各不純物の吸着エネルギー(E_<ad>)をab initio molecur dynamics(MD)計算から求めた結果、不純物とGaとのE_<ad>の差が-cGaN表面上の方が小さいことがわかった。これは不純物が-cGaNの方に多く取り込まれるチャンスが大きいことを意味しており、実験結果と矛盾しない。 (3)エッチングの極性依存性 アルカリ溶液(KOH)に対して、+cGaNは安定、-cGaNはエッチングされることが分かった。このエッチング異方性は、GaNの作製方法によらず、極性のみに依存する。光電子分光法(XPS)による表面観察からKOHのエッチングメカニズムについて検討した。
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