研究概要 |
形状記憶合金繊維を埋め込んだ知的複合材積層板を対象として,積層構成テーラリングによる最適構造設計と形状記憶合金繊維によるアクチュエーション効果との融合を図り,高性能知的複合材構造を実現するための研究を実施した.ここでは,知的複合材積層板おける曲げ変形抑制だけでなく振動数制御についても検討し,静的特性と動的特性の両面から高性能知的複合材積層板の有効性を検証した.平成10年度での研究成果を基礎として,平成11年度に得られた研究成果は以下の通りである. 1. 形状記憶合金繊維の形状記憶効果による回復応力の発生および剛性変化を考慮した定式化に基づき,形状記憶合金繊維アクチュエータ駆動前・後における振動特性および曲げ変形特性が,6個の積層パラメータの関数として表現できることを理論的に示した. 2. 6個の積層パラメータを用いて,形状記憶合金繊維アクチュエータ駆動前・後における知的複合材積層板の振動特性および曲げ変形特性の把握・検討を行った.特に,形状記憶合金繊維アクチュエータの駆動による振動特性および曲げ特性の変化に着目し,形状記憶効果によって発生する回復応力が振動特性および曲げ変形特性に及ぼす影響を明らかにした. 3. 形状記憶合金繊維のアクチュエーション効果を考慮した積層構成テーラリングに関する最適化問題を定式化するとともに,積層パラメータを中間的設計変数に用いた最適化手法を提案した.本最適化問題では面内と面外の積層パラメータが連成するため,数学的手法によって得られる近似的な設計領域の情報を制約条件として用いた.本手法により,振動数制御および曲げ変形抑制に関して形状記憶合金繊維の能力を最大限に引き出すことのできる積層構成を求めた. なお,研究発表においては振動特性を扱ったものが主であるが,曲げ変形特性を取り扱った研究成果も既に得ており,その成果は投稿準備中である.
|