研究概要 |
(目的)染色体の連鎖地図を構築する際、親系統の選択は非常に重要な問題となる。一般に、できるだけ変異が多く、かつ交配可能である2系統を親系統とすることが望ましいと考えられる。本研究では栽培フツウソバ(F.esculentum ssp.esculentum)、及び栽培フツウソバと交配可能な近縁野生種F.esculentum ssp.ancestralis、F.homotropicumの系統関係をAFLP(Amplified Fragment Length Polymorphism)を用いて調査し、ソバ染色体連鎖地図を構築するための親系統の決定を行った。 (方法)日本、中国,ロシアの栽培フツウソバを6地方品種、中国雲南省、四川省、チベット自治区のF.esculentum ssp.ancestralisを8集団、中国雲南省、四川省のF.homotropicumを2集団用いた。各集団のから3個体を任意に選び、個体別にtotal DNAを抽出し、4組のプライマーセットを用いてAFLPを行った。個体間の遺伝距離(D)は「1-バンドの共有率」として算出した。 (結果と考察)検出できたバンドの総数は102本であり、このうち96バンドで変異が見られた。栽培フツウソバ、F.esculentum ssp.ancestralis、及びF.homotropicumの種内での平均のDはそれぞれ0.225、0.259、及び0.163であった。他の2種に比べF.homotropicumにおいてDが小さかったのはF.homotropicumが自殖性であることに起因していると考えられる。栽培フツウソバとF.esculentum ssp.ancestralisでもっともDが大きくなった組み合わせは日本の北海道の栽培品種と四川省塩源県のF.esculentum ssp.ancestralisであった(D=0.355)。また、栽培フツウソバとF.homotropicumでもっともDが大きくなった組み合わせはロシアのVictriaの栽培品種と雲南省麗江県のF.homotropicumであった(D=0.365)。今後、これらのDが大きかった組み合わせを親系統に用いてソバの染色体連鎖地図を作成することが望ましいと考えられる。
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