水稲の登熱初期に葉身窒素含有率が高い個体は、玄米中アンモニア態窒素含有率が高く、かつ粒重増加が小である現象を筆者らは過去の種々の実験で確認している。この玄米中アンモニア態窒素と粒重増加抑制との因果関係を解明する実験を昨年実施した。その結果、粒重増加が小である玄米でもアンモニア態窒素の蓄積が認められなかったことより、玄米中にアンモニア態窒素が蓄積することで粒重増加が抑制されることを確かめた。 上記の結果を受けて、本年は圃場条件下で生育した稲体で玄米中アンモニア態窒素、粒重および葉身窒素含有率の相互関係を明らかにするとともに、玄米中のアンモニア態窒素の由来を明らかにする基礎的な実験を試みた。 籾数は同じで葉身窒素含有率に差をつけるため、出穂前7日に窒素施用量を3水準設けた区や受光条件を変えた区を設定した(計8区)。また、晩植することで栄養生長期間を17日と短縮(普通植は49日)することで、より高い稲体窒素含有率の個体を作出した。晩植したため登熟期の気温が低く粒重増加は緩慢で、穂揃後30日でも葉身窒素含有率と粒重の間に負の比例的関係が認められた。このとき、玄米中アンモニア態窒素含有率と粒重との間にも負の相関関係が成立した。また、葉身窒素含有率と玄米中のアンモニア態窒素含有率とは高い正の相関関係にあり、玄米中のアンモニア態窒素は葉身窒素の反映である可能性が示唆された。 そこで、玄米中のアンモニア態窒素の由来を明らかにするため、籾殻中のアンモニア態窒素を調べ、玄米中アンモニア態窒素との関係を検討したところ、両者の間には正の相関関係が認められた。籾殻は玄米よりも高いアンモニア態窒素含有率であったことより、アンモニア態窒素は籾殻から玄米へ転流している可能性が示唆された。
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