研究概要 |
収穫後のセイヨウナシ'バートレツト'果実に対するエチレン処理あるいはポリエチレン包装と低温貯蔵が,果実のポリフェノール組成・含量ならびに果肉抽出物の抗酸化活性およびラジカル消去活性に及ぼす影響を調査した. 1.収穫後直ちに15℃で追熟させると総ポリフェノール含量は増加し,エチレン処理は増加を早めた.エチレン処理区においてはより重合度の大きいプロシアニジン類の含量が増加し,カテキン類,プロシアニジン二量体およびクロロゲン酸は減少した. 2.収穫後の果実をポリエチレン袋で有孔包装あるいは密封包装し,2℃で貯蔵すると総ポリフェノール含量は両包装区において貯蔵14日にかけて一時的に増加し,貯蔵期間が50日と長くなると減少した。2℃から15℃への昇温後はポリフェノール含量は減少傾向であったが,密封区の50日貯蔵後の昇温は含量を顕著に増加させた. 3.カテキン類,プロシアニジン二量体およびクロロゲン酸などの比較的低分子のポリフェノール類は有孔区,密封区ともに2℃貯蔵中に減少し,密封区において減少率がより大きかったことから,密封包装による長期貯蔵はこれらのポリフェノール類の含量を大きく低下させる可能性が示された. 4.果肉抽出物のDPPHラジカル消去活性の変化は総ポリフェノール含量の変化と類似していたが,SDSミセル内のリノール酸に対する抗酸化活性の変化は傾向が異なり,低分子成分の含量変化に影響を受けることが示唆された.これにより,抗酸化能の評価は実験に用いた測定系によって異なることが示された.
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