1)サトイモ6品種の球茎をポリエチレン袋に密封し、0℃のインキュベータ内で貯蔵し、腐敗の発生の様相を観察した。腐敗の発生は貯蔵45日後から認められ、75日後にはほとんどの球茎が腐敗した。腐敗の発生の開始部位は、上位または下位の球茎を切り離した跡であることが多く、球茎の中心から腐敗を生じた例はまったく認められなかった。 2)4品種の球茎からコルクボーラを用いて無菌的に径10mm、厚さ2mmのディスクに切り出し、シャーレに寒天のみ分注した培地上に置床して0℃で培養した。1週間ごとにTTC反応により呼吸活性を調査したところ、7週間経過しても呼吸活性が十分であり、'RX'および'TC'(いずれもえぐ芋の系統)では13週間後でもわずかながら呼吸活性が残っていた。 3)10品種を供試し、冬季地上部が枯れたあとも圃場に据え置き土中に貯蔵した。同時に3〜5℃および7〜9℃に維持した冷蔵庫中で貯蔵した。およそ90日後の腐敗の様相を調べたところ、'セレベス'、'石川早生'、'唐芋'で腐敗の発生が著しく、'R55'、'土垂'、'大野芋'ではもっとも腐敗の発生が少なかった。 4)3)の供試品種にサトイモに感染力を持つフザリウム菌株を接種した。3)の結果と異なり、'唐芋'でもっとも腐敗の進行が遅かった。 5)4品種の球茎を球茎重が3%、6%および10%減少するまで乾燥させた後、平均温度を-1℃に維持したインキュベータ内で貯蔵した。6%以上乾燥させた区では、貯蔵期間中を通して凍結による壊死は観察されなかった。60日を経過すると乾腐症状が認められ、90日後にはほとんどの球茎で乾腐病の著しい進行が認められた。 6)以上の結果から、貯蔵虫のサトイモ球茎の腐敗は低温による壊死ではなく外生菌の侵入によるものと考えられる。サトイモの腐敗はサトイモ組織の外生菌に対する防御機構が大きく関与しており、防御機構の機能に温度が関わっていると観測される。
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