研究概要 |
ナスにおいて雄性不稔の利用は品種育成に多大な貢献をするものと考えられるが,これまでに実用的なナスの雄性不稔系統は見出されていない.本研究では,細胞融合法および戻し交雑核置換法を用いて近縁野生種の細胞質をナス栽培品種に導入することによってナスの細胞質雄性不稔系統を育成することを目的としている.本年度(平成11年度)では,1)ナスと近縁野生種との間の細胞融合を試みるとともに,2)細胞質雑種(S.indicumの細胞質をもつナス)における雄性不稔性の発現機構の解明を試みた. 1.近縁野生種Solanum gilo Raddi.とナス栽培品種'Uttara'との細胞融合を行った結果,再分化個体を得ることに成功したが,前年度と同様,すべてS.giloと同一のパターンを示し,体細胞雑種が得られなかった.次に,近縁野生種Solanum indicum L.と'Uttara'との細胞融合のためにS.indicumの試験管内播種を行ったが,すべて発芽せず,S.indicumが強い種子休眠性をもつことがわかった.今後,休眠打破のための諸条件の検討が必要である 2.連続戻し交雑で得られたS.indicumの細胞質をもつナス('Uttara')が発現する二種類の雄性不稔性,すなわち,花粉不放出および低い花粉稔性,についてその原因の解明のために組織学的解析を行った結果,花粉の不放出については,開花時に開葯ぜず花粉放出孔が形成されないこと,また,低い花粉稔性については,減数分裂第一前期から中期にかけて花粉母細胞が葯隔とタペート細胞に圧迫されること,がそれぞれ直接的原因となっている可能性が高いことが示唆された.
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