研究概要 |
昨年度に引き続き、京都大学芦生演習林と京都大学構内において、1990年に論文公開した方法(Kato et al,1990; Kakutani et al,1990)に準じた訪花昆虫群集調査を行った。すなわち、一定の調査コースを定め、そのコース沿いで訪花を確認したすべての植物種を調査対象として、植物の種ごとに10分間に確認した訪花昆虫を分類群を問わず、すべて採集した。さらに、先の調査方法に加え本研究では、調査に際して昆虫を採集した花の写真をデジタルカメラで撮影した。採集した昆虫標本は、実体顕微鏡を用いて花粉の付着状況を調べた後、乾燥標本として昆虫標本箱に保管してある。なお、これらの標本は上記の論文の標本とあわせて、京都大学総合博物館で管理する。また、今年度は、虫媒花を確認した植物について、その植物を利用する食植者昆虫相についても調べた。さらに、地域間比較のため、神戸市北区においても若干の調査を行った。 この2年の調査で得られた昆虫標本ならびにデジタル画像を合わせて解析し、先に1990年に論文公開した結果と比較することによって、この10年にわたる訪花昆虫群集の変化が、原生林内と市街地でどのように違うかが明らかになる。これらの全情報を総合的に解析するためにデータベースソフトOracleを導入し、現在そのデータベース化を進めている。また、10年前には定量的に評価しきれなった花と昆虫の形態的共進化に関する評価をデジタル画像のコンピュータ処理によって解析中である。また、送粉者、盗蜜者の関係のみならず、植食者が送粉系に及ぼす影響についても、データベース化が完了し、解析が進めば議論できそうである。 なお、こうした研究では、1990年に公表した論文の場合と同様に5年程の継続調査を行った上で、結論を導くことが好ましいが、中間報告的論文を近日中の公表をめざして執筆中である。
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