研究概要 |
コンポストから分離、選抜した拮抗微生物(10株のBacillus属細菌と1株の糸状菌)のトマト疫病(Phytophthora infestans)に対する抗菌作用を明らかにするために,それらの生産する抗菌物質の分離、同定と抗菌活性の検定を行った。 前年度、10株のBacillus細菌が3タイプの抗菌物質(塩基性と酸性の揮発性化合物、Amberlite XAD-2に吸着される化合物)を生産していることを明らかにしている。HPLC分析により培養液中に400〜500mg/LのNH_4^+が検出されたことから塩基性の揮発性抗菌物質はNH_3と考えられた。NH_4ClとNH_4SO_4に比べて、NH_3の方がより低濃度でP.infestansの生育を強く阻害したことから、NH_4^+よりNH_3に強い抗菌活性があると考えられた。GC分析により培養液中に最大で約100mg/Lのイソ酪酸、2-メチル酪酸、イソ吉草酸が検出された。これらの揮発性の低級脂肪酸は、100mg/LでP.infestansの生育を100%阻害した。また、NH_3とこれらの低級脂肪酸は、他のトマト病原菌に対してよりもP.infestansに対して特に強い抗菌活性を示した。Amberlite XAD-2に吸着される画分のTLC bioautographyの結果から、6株の細菌に抗菌物質が確認され、その内4株についてはLCMS分析から、iturinAを同定した。他の2株については未同定である。 糸状菌の培養液の酢酸エチル抽出物からシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって単離した3種の抗菌物質を、NMRとMSスペクトル分析により、それぞれterphenylin,candidusin A,3-hydroxyterphenyllinと同定した。terphenyllinと3-hydroxyterphenyllinは、100mg/LでP.infestansの生育をそれぞれ約90、60%阻害した。 トマトを再現性良く罹病させることができなかったため、これらの拮抗微生物のトマト疫病に対する防除効果については今後の検討課題である。
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