研究概要 |
重窒素ラベルをしたマメ科緑肥(ヘアリーベッチ,シロクローバー)を作成し,ワグネルポットに詰めた水田土壌の表層および全層に施用し,緑肥由来窒素の動態および植物体の生育との関係について検討を行った。初期の草丈は,化学肥料区≫ベッチ全層,クローバー全層,クローバー表層≫ベッチ表層の傾向が見られたが,収穫時にはベッチ全層>クローバー全層>ベッチ表層>クローバー表層,化学肥料区と変化が見られた。圃場試験と同様にヘアリーベッチは生育後期までに窒素発現を持続する能力が高いことが認められた。葉色値についてもほぼ同様な傾向が見られたが,茎数はベッチ表層区の場合,初期の窒素発現量が低いため、全期間にわたり低く推移した。緑肥由来窒素の利用率はヘアリーベッチが21%,シロクローバーが25%程度であり,化学肥料区の元肥窒素利用率は24%であった。表層および全層施用における利用率の違いはほとんど見られなかった。土壌中の窒素無機化過程のメカニズム解明のために,土壌バイオマスを構成する窒素化合物であるN-アセチルグルコサミンを基質として用い,デアミナーゼ活性の測定方法の開発を行った。至適pHは7.5-8.5と比較的広く,アミダーゼ活性に比べて活性は低いが,37℃で24時間保温することにより活性測定が可能であることが判明した。水田土壌が入ったビーカーにヘアリーベッチ,シロクローバー,レンゲを部位別に施用し,湛水下でインキュベーション試験を行ったところ,葉部を施用した場合,有意に本酵素活性の上昇が認められた。葉部は炭素率が低いため,土壌微生物によって容易に分解され,窒素無機化関連酵素が誘導的に生産されたものと考えられた。
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