研究概要 |
様々な生物の遺伝子工学的な改良がなされているが,食品に使用される生物への応用には安全性の面で問題がある。その原因の1つは,有用遺伝子を生物体に導入する際、必ず大腸菌の遺伝子,例えば抗生物質耐性等の配列を目的生物に導入してしまうことである。この問題を解決するために酵母から不必要な遺伝子配列のみを除去する技術を開発した。この技術をもとに醸造酵母の遺伝子組換え育種を試みた。 1.実用酵母に導入する有用変異遺伝子の作成 清酒酵母に導入する有用遺伝子を作成した。香気成分は清酒の品質に多大な影響を与えており,香り高い酵母の育種が望まれている。香気成分のカプロン酸エチル高生産のために,FAS2遺伝子に部位特異的な変異を導入し,いままでよりも高いカプロン酸エチル量を生産できる変異遺伝子を作成できた。他にも,遺伝子の過剰発現により香気成分の一つである酢酸イソアミルを高生産する組換え遺伝子も作成した。 2.有用遺伝子の醸造酵母への導入と不要遺伝子の除去 初年度に作成できた除去ベクターは有効に機能したが,実用酵母への遺伝子導入に問題があった。そこで,実用酵母用の遺伝子導入用マーカーを開発した。この導入用マーカーは,強い薬剤耐性を示し,栄養要求性マーカーと同程度の効率で遺伝子導入ができた。さらに,実用酵母に最適な遺伝子導入方法も検討し,高い形質転換率を達成できた。この導入用マーカーと除去マーカーを組み合わせ,上記の香気成分高生産遺伝子導入することで,不要な配列を含まない有用清酒酵母が育種できる。
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