研究概要 |
地域森林作業システム機械化の発展過程ついて、2つの視点から検討した。第一に、北海道における高性能林業機械の普及過程について明らかにした。北海道の高性能機械化は、次の3つの段階で進行していた ; (1)一部の素材生産事業体による外国製機械の導入、(2)紙パルプ企業などによる全機械化作業システムの採用、(3)中小企業体を中心とした半機械化作業システムの普及。高性能機械の普及は既にかなりの程度進んでいるものの、導入された機械の多くは稼働率が低い状態にあった。そこでこの結果をふまえ、地域素材生産構造再編による効率的機械利用の可能性について、北海道富良野地域を対象に検討した。前年度の調査結果をもとに、同地域の人工林素材生産構造を明確化した。また、東京大学北海道演習林で実際に行われたハーベスタ・フォワーダ作業システムによる事業結果から、同作業システムのコストモデルを構築した。さらに、地域素材生産業の再編方向についてシナリオを想定し、ハーベスタ・フォワーダ作業システム導入による素材生産コストのシミュレーションを行った。その結果、地域の素材生産構造が現状のまま維持されるケースでは、同システムの事業量が77〜3,485m^3/年、生産コストが4,600〜116,700円/m^3と算出された。これは、大部分の事業体で同システムの導入がコスト削減に至らないことを示唆している。一方、森林組合や国有林による事業の集中配分を想定したケースでは、同システムの事業量が3,800〜6,000m^3/年、生産コストが3,500〜4,300円/m^3と算出された。この結果は、同地域における素材生産構造の再編により、高性能機械利用の効率化が十分可能であることを示している。
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