研究概要 |
海岸に散乱する発泡プラスチック破片による海岸汚染の現状を把握するため,正方形枠(40×40×5cm)内の砂中に含まれる漂着埋没物の調査,鹿児島湾を例にその発生源の一つと考えられる発泡プラスチック製大型漁業資材の漂着状況調査,ニューストンネットによる海上浮遊物調査を行った。 発泡スチレン製フロートは鹿児島湾全域に漂着しており,その総数は3,042個,平均漂着密度は10.3個/kmであった。特に大隈半島側の牛根〜鹿屋間(東桜島を含む)の漂着量は全体の61%を占め,牛根地区における漂着密度が38.9個/kmで最も高かった。また海上フロート(海上でカバーを掛けずに使用されているフロート)4,856個,陸上フロート(海岸に野積みされているフロート)1,344個を確認した。特に海上フロートの82%は港内等において係留ブイや防舷物に利用されていた。さらに漂着生簀127基,生簀フレーム223本も確認したが,これらは主に養殖場周辺の海岸に漂着していた。一方発泡プラスチック破片は,鹿児島湾垂水市海岸の8,000cm^3の砂中に11,068個漂着埋没しており,漂着人工物総量の98.4%を占めた。この発泡プラスチック破片の平均体積は約10mm^3と極めて小さく軽いため,陸上では風によって容易に移動する。よって漂着分布を比較することは難しいが,八代海,東シナ海沿岸,奄美大島など,鹿児島湾外の海岸でも多数発見された。一方,鹿児島湾の海上を漂流している発泡プラスチック破片は,鹿児島市沖,大隈半島側に多く分布し,漁業資材として発泡プラスチック製フロートが大量に使用されている地域に多い傾向がみられた。
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