研究概要 |
まず,致死直後のマダイから鱗を採取し,ヒアルロニダーゼおよびコラゲナーゼを含むリンゲル液中で30分間インキュベートし,軽いピぺッティングによって鱗に付着した上皮細胞を分散した.これフィブロネクチンコートしたカバーグラス上に12時間放置することによって細胞接着を誘導した.カバーグラスごと顕微鏡に設置した灌流チャンバーに装着し,カフェインを含むリンゲル液を灌流することによる刺激を行ったところ,黒色素細胞および赤色素細胞ともに,色素顆粒を拡散させることが明らかとなった.これは,カフェインがホスホジエステラーゼを阻害することによって細胞内cAMP濃度が上昇し,その結果顆粒に結合したモータータンパク質が移動したものと考えられた.また,コルヒチン投与すると微小管が脱重合し,色素顆粒の運動性が失われた.―方,アクチン重合阻害剤の投与によって顆粒運動が阻害されることはなかった.したがって,マダイ色素細胞でも顆粒は微小管上を移動しているものと考えられた.さらに,約1℃冷却したリンゲル液を灌流して色素細胞を急冷すると,黒色素細胞では顆粒が凝集し,赤色素細胞では顆粒が拡散するという全く異なった応答が観察された.これは,予備的な鱗上の色素細胞について検討した際の結果と―致するものであった.したがって,冷却に対するマダイ色素細胞の応答は、神経やホルモンなどを介する応答ではなく,細胞そのものの応答であることが明らかとなった.以上のように,酵素分散した色素細胞は,種々の薬物や冷却などの刺激に対して,鱗上と同様の反応を示すことが明らかとなった.そこで,細胞の大量精製法の検討を行い,percol密度勾配法によって,黒色素細胞および赤色素細胞が分離できることが明らかとなった.
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