家畜の精子形成の際に特異的に発現する遺伝子群を探索するために、まず家畜の精巣から間質細胞と精細管構成細胞の分離を試みた。実験材料としてヤギ精巣を用いることになったが、これまでにブタおよびウシの精巣にて用いた方法を部分的に改変することによりヤギの精巣に適用可能であることが判明した。次に、細胞からRNAを抽出・調製するための条件検討を行った。その結果、塩化リチウム存在下にてRNAが沈殿する原理を応用した方法が適当であることが判明した。この方法を用いてまず生殖細胞画分と体細胞画分からそれぞれRNAを調製したが収量などの点で問題が生じた。そこでつぎに月齢の異なる動物の精巣組織から直接RNAを抽出し、これを鋳型とした逆転写反応を行うことによりcDNAを得た。さらに、任意プライマーを用いたPCR増幅を行い、その産物をアガロースゲル電気泳動により分離した。約20種類の細胞種特異的DNAバンドが観察された。これらのDNA断片を回収してプローブを作製し、発育段階に特異的なmRNAであるか否かを検討するためノーザンハイブリダイゼーションを行った。さらに、家畜の各種組織中から抽出したmRNAのノーザンブロット解析を行い、組織特異的転写を調べた。精巣組織特異性の高いcDNAが幾つか得られたが、雄性生殖細胞形成に特異的か否かを確かめるためには、発現時期や精巣組織内局在などさらに詳細に検討する必要があると考えられた。
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