研究概要 |
1, 完全長のラットFSHβ鎖cDNAクローニングし、塩基配列を解析してヒトとウシのFSHβ鎖3'UTRと比較したところ、mRNA不安定化シグナルのコンセンサス配列を持つ部位がヒト、ウシ、ラットの間で保存されていることが明らかとなった。 2, サイトメガロウイルスプロモーターの下流にラットFSHβ鎖cDNAをつなぎ、これを下垂体細胞由来の細胞株であるαT3-1細胞、RC-4b/c細胞に導入した。これらの細胞にインヒビン、アクチビンを作用させたときのFSHβ鎖mRNAの発現量の変化を解析したが、FSHβ鎖mRNAの発現量に変化は観察されなかった。 3, αT3-1細胞をインヒビン又はアクチビンで刺激した後、それらの細胞のポリゾームを分離してin vitoro RNA degradation assayを行ったが、αT3-1細胞のポリゾームによるFSHβ鎖mRNAの分解速度はインヒビン、アクチビンの添加により影響されることは無かった。 4, ラット下垂体前葉初代培養系にインヒビンを添加したとき、インヒビンの添加により、FSHβ鎖mRNAの安定性が低下することが確認され、しかもその作用はRNAの転写を抑制することによって見られなくなることが明らかとなった。 以上の結果から、インヒビンによるFSHβ鎖mRNAの発現抑制は、細胞内でのmRNAの不安定化により行われていることが明らかとなり、その機構には新たな転写産物が必要である可能性が示唆された。また、今回用いた下垂体性腺刺激ホルモン産生細胞由来の株化細胞(いずれもFSHを分泌しない)では、この作用は見られないことから、FSHβ鎖mRNAの安定性調節機構は、FSHを産生する細胞に特異的なものである可能性が示唆された。
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