研究概要 |
本年度は、クリイロコイタマダニ(以下Rs)の唾液腺抽出物(以下SGE)のうち、本来の宿主である犬末梢血リンパ球(PBL)機能を抑制する成分の性質を明らかにするとともに、免疫グロブリン産生機能をin vitroで抑制する成分を特定するための系を確立し、さらにSGEが免疫グロブリン産生能に及ぼす効果を観察した。 まず、Rs-SGEが犬PBLの3種類のマイトゲン(ConA,PHA,PWM)に対する反応性に及ぼす効果を調べたところ、全てのマイトゲンで濃度依存性に抑制がみられた。また、これらの抑制はあらかじめRs-SGEをタンパク分解酵素(トリプシン)処理、熱処理(56度以上)、または犬抗Rs-IgGで処理することにより、その抑制活性を消失した。これらのことより、犬PBLを抑制するRs-SGEの主要な成分はタンパク質であること、また特にT細胞の活性を抑制することが考えられた。 次に、犬PBLの免疫グロブリン産生機能を測定するために、ELISA系を確立した。抗犬IgG,MまたはAを用いたサンドイッチ法により、PBLをLPSまたはPWMで刺激培養したの上清中の各免疫グロブリンを1ngのオーダーで測定可能であった。これらの免疫グロブリンはRs-SGEを添加することによりほぼ濃度依存性にその産生が抑制された。これらのことより、SGEが犬のB細胞への直接作用またはT細胞依存性に免疫グロブリン産生を抑制した可能性が考えられた。
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