研究概要 |
腎糸球体足細胞は、形態学的にもっとも分化した細胞の一つである。本研究では、足細胞の培養株を用いて、この細胞の持つ複雑な突起の形態がどのようにして形成されてゆくかを明らかにしようとしている。本年度には特に、微小管の機能を制御する因子について研究した。 細胞質内で伝達される情報としては、蛋白質のSer/Thr残基におけるリン酸化が足細胞における微小管機能調節の鍵を握ることが明らかになった。すなわち、蛋白質キナーゼの阻害剤(H-7,K-252a)は突起形成を促進するのに対し、脱リン酸化酵素の阻害剤(okadaic acid)はこれを抑制した(kobayashi et al.,投稿中)。 また、細胞外からの情報としては、さまざまな細胞外マトリックス蛋白がそれぞれ異なった影響を与えることが明らかとなった。すなわち、ラミニン(正常な糸球体基底膜の構成分子の一つである)は突起形成を促進したが、フィブロネクチン(通常は糸球体基底質に含まれない)はこれを抑制した(kobayashi et al.,投稿中)。これに関連して、細胞外マトリックスに関する総説を発表した(小林&坂井,2000)。 微小管の機能、特にその重合を直接調節しているのは、微小管関連蛋白MAPsと呼ばれる一群の蛋白である。足細胞に発現している微小管関連蛋白としてこれまでに、MAP3とMAP4が別々に報告されていた。我々は分子レベルの解析により、その二つの蛋白が同一であることを示して論文として報告した(kobayashi et al.,2000)。 また、足細胞における微小管の機能についての総説(小林ら,1999,1999)や、足細胞全般に関して考察した総説を発表した(小林&坂井,1999)。さらに本研究に関連して、突起形成に共通する機構を考察した総説を発表した(小林ら,1999;Matsuda et al.,1999,1999)。
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