研究概要 |
マウスにおける肝臓類洞壁構成細胞の個体発生にともなう変化は肝臓造血の消長と密接に関連する.肝臓造血は造血幹細胞が肝細胞索内へ遊走することによって開始する.胎生10〜11日で類洞内皮を通過する造血細胞は細胞直径8.1〜10.4μm,核直径5.8〜7.3μmで大型の核小体を持つ.肝細胞間に定着した造血細胞は分裂増殖し原始造血巣を形成する.造血細胞は肝細胞間に散在し,隣接する肝細胞は短い細胞質突起を連結させ幼弱な造血細胞を取り囲む.この時期,マクロファージは類洞腔に限局し,造血巣と直接の関連はない.胎生13日で赤芽球を中心とする造血細胞の著しい増殖により,造血細胞集団を取り囲む肝細胞は細く長い細胞質突起によって隣接する肝細胞と連結する.原始造血巣には脱核により放出された赤芽球核が増加し,マクロファージが類洞腔から移動しこれを活発に取り込む.マクロファージは周囲の赤芽球と密接して赤芽球島を形成する.胎生14〜15日で肝細胞索内の隣接する造血巣が愈合拡大し,一部の造血細胞は類洞内皮の大型欠損によって類洞腔内へと移動,肝細胞索と類洞内で平行して造血が進行する.隣接する肝細胞は広い面で接触し,細胞側面には毛細胆管が形成される.生後0〜7日で肝細胞索は多量のグリコーゲンをもつ肝細胞によって占められ,造血巣はマクロファージを中心に1〜2層の造血細胞からなる小さな造血巣が,類洞に隣接して肝細胞間に島状に点在するのみとなり,肝臓造血は終息する.
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