研究概要 |
滑膜肉腫には上皮成分と肉腫成分よりなる2相型(BBS)及び肉腫成分のみからなる単相線維型(MFSS)が主である.HGFc-RNAプローブを用いてBSS及びMFSSのmRNAの局在についてISH法により検討した.いずれの腫瘍細胞にも陰性であり,RT-PCRでBSSのみに陽性所見が得られた結果と解離していた.mRNAの発現が検出感度以下であった可能性,パラクリン的に作用する可能性が考えられた.凍結材料を用いたE-,N-カドヘリン(CAD)の免疫組織化学を行った結果,E-CADはBSSの上皮成分のみに陽性であり,N-CADはBSSの上皮成分に1例で陽性であった.β-カテニンについても検索し,BSS全例の上皮成分の細胞膜に陽性所見が認められたがBSSの肉腫成分及びMFSSでは陽性所見は半数に過ぎなかった.上皮様形態形成にE-CAD/β-カテニン系が関与していると考えられた.MFSSの1例では腫瘍細胞の核内にβ-カテニンの集積像があり,遺伝子変異に伴う安定化の像であり,増殖への関与が示唆された.培養細胞株を用いたE-CADのウェスタンブロット法では,BSS由来,MFSS由来株ともに陽性所見は得られず,免疫組織学的検索結果と解離していた.BSS由来株は,in vivoで上皮形態をとっておらず,上皮性格が失われている可能性があり,今後上皮性格を残している細胞株の樹立が必須であると考えられた.また,リコンビナントHGF(rhHGF)を添加し,形態の変化や増殖の程度を観察したが,上皮様分化や増殖率の変化は認められなかった.増殖にはHGFの関与が少ないことが考えられたが,詳細な検索が必要である.さらにBSS由来株をコラーゲンゲル内で培養し,rhHGFを加えて形態変化を観察したが,上皮様形態はとらなかった.今後,さらに培養条件や用いる細胞株を検討する必要があると考えられた.
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