研究概要 |
食道表在癌、進行癌において細胞外マトリックス変化、特に細胞膜型ヘパラン硫酸変化を調べ、癌の進展、臨床病理学各次項との相関を検討した。またヘパリン親和性があり血管新生作用のあるサイトカイン、bFGF,VEGFの発現についても検討した。対象症例はm癌22例、sm癌25例、mp以上の進行癌が56例である。細胞膜型ヘパラン硫酸であるsyndecan-Iのコアプロテイン、ヘパラン硫酸糖鎖、コンドロイチン硫酸糖鎖に対するモノクローナル抗体を用いて免疫染色を行い、それぞれの染色強度、分布を組織学的に検討した。bFGF,VEGFについても免疫染色を行いその発現、分布を調べた。Syndecan-Iコアプロテインはm癌例で81.8%、sm癌例で52%、進行癌で37.5%の症例で発現を認め、癌が進行するにつれて発現頻度が低くなる傾向を認めた。ヘパラン硫酸糖鎖についてもm癌例72.7%、sm癌例48.0%、進行癌例26.8%と癌の進行につれて発現が弱くなる傾向が認められた。コンドロイチン硫酸糖鎖の発現頻度と癌の進展とは相関が認められなかった。Syndecan-Iコアプロテイン、ヘパラン硫酸糖鎖ともに同一例内においても浸潤深部、浸潤胞巣の先進部、特に炎症反応、肉芽反応が強い部位に発現が弱い傾向が認められた。コアプロテイン、糖鎖を比較すると糖鎖の消失がより浸潤早期に認める傾向があった。bFGF,VEGFともにsyndecan-I発現が高い例に発現を強く認める傾向があった。食道癌の進展にsyndecan-I、特に糖鎖の消失が深く関与していることがわかった。ヘパラン硫酸分解酵素、ヘパラナーゼ発現の関与が示唆される。
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