研究概要 |
非虚血性剖検例の冠状動脈について、特に若年者症例について組織学的変化と臨床デ一タを詳細に検討した。40歳未満で臨床データが得られた52例で、狭窄度、形態(concentric,eccentric)・性状(fibrous,1ipid-rich)と臨床データ(コレステロール(TC)値、トリグリセリド(TG)値、喫煙)について調べた。その結果、1ipid-rich群はfibrous群に対し有意にTC値が高かった。狭窄度50%以上の症例は7例で、内訳はeccentric fibrous群が3例、concentric fibrous群がl例、eccentric lipid-rich群が3例であった。7例中5例は高TG血症(1例は高TC血症を合併)を示し、fibrous群4例中3例に高TG血症を認めた。 以上両年度の結果より、日本人での冠状動脈硬化は、若年時から形成される線維性内膜肥厚が加齢に伴い、局所的な泡沫細胞出現・脂肪沈着等によりeccentricな傾向が強調されプラークが形成される、という過程でおこることが示唆された。何らかの促進要因が働けば動脈硬化が早く進行するが、進行例の多くに高TG血症が認められたことよりTGが若年者動脈硬化進展に関与していることが強く示唆された。 心筋梗塞剖検例は、新規に剖検された3例中1例にプラーク破綻を確認できた。今までに収集した全20症例のうち、病変は1ipid-rich lesionが15例と最も多く、血栓を認めた18例のうちプラーク破綻を確認したのは7例でerosion部に血栓を認めたものが9例であった。以上より心筋梗塞の病態はプラーク破綻例も多いがerosion例も少なくないことが確認できた。今後、日本人の特性もふまえ冠状動脈硬化について詳細に検討していく必要性があるものと思われた。
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