研究概要 |
【ミオシン重鎖アイソフォームの発現】:胎児性ミオシン重鎖アイソフォームであるSMembの発現をGIST27例中18例(67%)で認めたが、平滑筋特異的ミオシン(SMI,SM2)の発現は1例で見られるのみであった。SMemb陽性を示すGIST18例の全例でKITの発現を、16例(89%)でCD34の発現が見られた。蛍光二重染色による観察では、消化管のカハールの介在細胞で、KIT,CD34,SMembの共発現を認め、GISTの発生母地と考えられた。【テロメラーゼ再活性化】:GIST原発巣24例中7例(29%)、転移巣5例全例にテロメラーゼの再活性化を認めた。テロメラーゼ陽性のGISTは全て組織学的にhigh riskに分類され、テロメラーゼ陰性のGIST17例中15例はlow riskであった。テロメラーゼの活性化は有意に予後と相関しており、悪性度の指標として有用である。また、将来、テロメラーゼ阻害剤の治療の対象となりうることが期待される。【遺伝子欠失】:マイクロサテライトマーカーを用いた検索では1p(7/19,37%),14q(9/19,47%),22q(17/22,77%)で高頻度に遺伝子の欠失が見られた。最も高頻度に欠失の見られた22qについてマイクロサテライトマーカーを追加して検索したところ、欠失は22q12領域で最も高かった。この領域にはNF2遺伝子が含まれるため、PCR-SSCPにより遺伝子変異の検索を行ったところ、22例中2例に変異が見られた。NF2遺伝子の不活化がGIST発生の一因になっている可能性がある。【c-kit遺伝子変異】:c-kit遺伝子exon11領域についてPCR-SSCPおよびダイレクトシークエンシングにより遺伝子の変異を検索した。原発巣48例中15例(31%)、転移巣7例中4例に遺伝子変異を認めた。変異のうち3例はmis-sense point mutationで16例はin-frame deletionであった。欧米の報告と異なり、c-kit遺伝子の変異とGISTの悪性度、予後との間には相関が見られず、変異部位の違いが影響している可能性が示唆された。
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