研究概要 |
A.表面型大腸腫瘍:1)腺腫を経ず、de novoで均一に多数のLOHを起こし、浸潤する症例があった。17p,18q,5qLOHの頻度が高く、p53,DCC,APCなだの早期関与が想定される。2)粘膜内で腺腫を経て、あるいは浸潤癌に至る際、LOHの蓄積進展や枝分かれ現象のある症例がみられた。以上、従来の隆起性腺腫でのadenoma-carcinoma sequenceとは異なり、表面平坦な粘膜内早期に腫瘍クローンの遺伝子変異が蓄積、選択され浸潤癌に至る様式が明らかとなった。(論文投稿中) B.混合型肝癌:肝細胞癌と胆管癌部各々のLOH解析より3つのパターンに分類された。1)LOHのパターンが全く一致しない重複癌。2)LOHのパターンがすべて共通しており、単一クローン由来で遺伝的に均一な腫瘍細胞の持つ多分化能に基づく腫瘍。3)単一クローン由来でも、遺伝子変化の蓄積、分枝分散現象が腫瘍組織分化能に密接に影響している腫瘍。以上、複雑な組織分化能を示す同腫瘍のgenetic mechanismを明らかにした。(Human Pathology in press) C.女性生殖器癌肉腫:癌腫肉腫成分の複雑に混じる女性生殖器癌肉腫17症例つきLOHを検索し、遺伝的変異の蓄積進展パターンと腫瘍分化能との関係を明らかにした。一症例を除いては、両成分に共通するLOHがみられ、多分化能を有する単一クローン由来であることが明らかとなった。更に8症例では、LOHのパターンに不均一性が認められた。2症例では、癌腫が先行し遺伝的蓄積進展により癌肉腫となった。又、癌腫成分、肉腫成分の一部が別々に遺伝的蓄積進展や枝分かれを示す症例も認められた。肉腫成分が癌に先行する症例は認められなかった。以上より、婦人性器癌肉腫は、単一クローン由来であるが、遺伝的に不均一であり、その遺伝的蓄積進展パターンが組織分化能に複雑に影響している事が明らかとなった。(Cancer Research60;114-120,2000) 以上、上記3腫瘍のLOH解析により、genetic progression patternと組織分化能、腫瘍発育進展との関係につき多数の新知見を得た。
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