研究概要 |
タイト結合は、上皮・内皮の最も内腔側に存在する細胞間接着装置で、細胞間の選択的透過性を制御するバリアー機能の本態である。近年いくつかのタイト結合関連分子が見い出されており、その相互作用が生体バリアーの形成・制御に重要な役割を果たすと想定されている。マウスF9細胞株をレチノイン酸存在下で浮遊培養すると、臓側内胚葉細胞に相当する上皮様細胞に分化し、タイト結合が新生される。我々は、リガンド誘導性Creリコンビナーゼを開発し、F9細胞株に部位特異的遺伝子組換え系と遺伝子発現誘導系を導入し、多数の遺伝子の導入・ノックアウトと遺伝子発現の時間的・量的調節が可能な複合システムを開発した(医学のあゆみ,186,705-710,1998;実験医学,17,155-158,1999;1999 FASEB Summer Research Conference)。さらに、この遺伝子改変F9細胞を用いて、レチノイドがタイト結合関連分子の発現とバリアー機能を誘導することを見い出した(投稿準備中)。本細胞株で、タイト結合関連分子の遺伝子を破壊、あるいはその発現を時間的・量的に誘導することによって、タイト結合の構築・機能・制御機構を分子レベルで明らかにすることが可能である。 本研究は、生体バリアーの破綻による種々の病態の成立・治療に貴重な情報を提供することが期待される。
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