研究概要 |
平成11年度の研究により以下の事柄が明らかとなった。 (1)PU.1の各種変異体を作製しc-myc遺伝子の転写の抑制に必要なPU.1の領域を検索したところ、転写活性化領域とは異なるC-末の122-272アミノ酸に転写抑制活性があることがわかった。 (2)PU.1は転写抑制活性をもつ癌抑制遺伝子Rbと結合することが知られているので、PU.1による転写抑制にRBの関与があるか否かを調べた。RBを発現していないHeLa細胞、SAOS細胞を用いてPU.1によるc-mycの転写抑制の有無を調べたところ両細胞で認められ、PU.1の転写抑制にRBが関与しないことが明らかとなった。 (3)ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)は転写抑制機構において重要な役割を持つことが知られている。そこで、PU.1による転写抑制におけるHDACの関与の有無を知るためにPU.1とHDACの細胞内における相互作用を調べたところ、PU.1の全長および転写抑制活性をもつ変異体で認められた。しかしながら、転写抑制活性のない変異体では認められなかった。さらに、PU.1の全長および転写抑制活性をもつ変異体は基本転写調節因子TBPとも結合することがわかった。以上のことから、PU.1によるc-myc遺伝子の転写抑制にはHDAC,TBPを含む複合体の関与が示唆された。
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