研究概要 |
1.前年度に引き続き,レンサ球菌cADPR合成・分解酵素遺伝子をクローン化・発現させた大腸菌をマウスの腹腔内に生菌投与したが、対照群と比較して特別な所見(病的所見)は観察できなかった。また,ヒト血液の殺菌能に対する抵抗性を検討したが,対照群と比較して有意差が観察されなかった。 2.本酵素の活性に関与するアミノ酸残基について部位特異的変異体を用いて解析した。親・疎水性プロット・二次構造予測、エクソン・イントロン構造などを考慮して,レンサ球菌酵素、A.CalifornicaおよびA.Kurodai cADPR合成酵素、ラットおよびヒトCD38(cADPR合成・分解酵素)を比較すると、9個のアミノ酸残基が上記全て酵素で保存されており、またさらにレンサ球菌酵素とCD38でこの他に11個のアミノ酸残基が保存されていた。ヒトCD38のcADPR結合部位であるK129に相当するレンサ球菌酵素K162に変異を導入したところ、K162AおよびK162R変異体はcADPR合成活性を示したが分解活性は示さなかった。一方、E307AおよびE307D変異体はcADPR合成活性を示さなかったが分解活性は保持していた。さらに、このGlu残基の重要性を解析するために、レンサ球菌酵素E307に相当するヒトCD38E226における変異体を作製したところ,E226DおよびE226QCD38はcADPR合成活性を示さなかったが分解活性は保持していた。以上の結果は、レンサ球菌cADPR合成・分解酵素のE307およびK162が,それぞれcADPR合成反応およびcADPR分解反応に必須のアミノ酸残基であり、これら残基が細菌から哺乳動物まで進化的に保存されていることを示唆している。
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